日経新聞1月24日
経団連の人事ニュースと、そもそも経団連とは何ぞや?ということについて、説明します。
今日は休日で時間があるので、がっつり丁寧にリサーチしました。
経団連のことをよく知らない方にもわかるように解説しました。
【概要】
日本経団連(*1)の次期会長に、米倉弘昌 住友化学会長(72)の就任が固まった。これは、「旧財閥系(*2)」「化学業界出身」で、異例ずくめの起用である。
現会長の御手洗富士夫氏(キャノン会長)は、09年5月の会見で「次期会長は、15人いる副会長から選ぶ」といっていたが、結果的に副会長ではない米倉氏に決断。しかも経済界からは「自社の人事にも影響する話。決断が遅すぎる。」と不満があった。
今回の人事は、金融危機や政権交代など複雑な環境が絡まり、いわゆる「経団連銘柄(*3)」と言われる企業がそれぞれの事情を抱える中で実施。その要点について、説明する。
人事が遅れた理由は、意中の候補者に打診しようにも、各社の厚い壁のために、決定に至らなかったからだ。「意中の候補者」とは、3名いた。それは中村氏(パナソニック会長)と、西田氏(東芝会長)と、渡辺氏(トヨタ副会長)である。
1人目のパナソニックの中村邦夫会長は、御手洗氏が専務時代から目を付けており、中村氏本人も、御手洗氏の経営を参考にしていた。しかし、中村氏は「経済界に関心が薄かった」ために、予防線を張り、経団連会長は受けないとの姿勢でいた。
御手洗氏としては、「経団連会長でありながら(自分では)政権与党の総理となかなか会えないという悩みを持っており、中村氏なら解決できて、経団連(=経済界)の政策提言が受け入れられやすくなる」との読みがあった。
だが中村氏は受けない姿勢を貫き、09年後半以降は経団連の会議にも顔を出さなくなり(笑)御手洗氏はついにあきらめた。
2人目の東芝の西田厚聡氏会長に関しては、御手洗氏が東芝の経営諮問委員を務めていたことからその才覚を認められていた。そして御手洗氏からは「日本全体がどうなるかの俯瞰図を描ける有能な経営者」と評価され、次期会長の可能性を探った。
しかし東芝には、すでに相談役が日本商工会議所の会頭を勤めており、仮に西田氏を経団連会長に据えると、「経済3団体」(*4)の2つの要職を東芝が占めることになってしまう。これは避けた方がいいとの異論が上がり、御手洗氏はあきらめた。
3人目のトヨタの渡辺捷昭(かつあき)会長に関しては、経済界で抜群の安定感を誇るトヨタの人材として起用を望まれていたが、同社社長は「赤字で経済界での活動をする余裕はない」と拒否し、御手洗氏はあきらめた。
これらのことから、最終的に御手洗氏は経団連の「不文律」を破る形で旧財閥系企業からの起用を決断。国際的知名度も劣るが、グローバル化を推進してきた米倉氏(現・評議員会議長)に白羽の矢を立てることとなった。
【お勉強】
*1
日本経団連とは?
正式名称は「社団法人日本経済団体連合会」。2002年に、(財界からの政策提言を目的に結成された)「経済団体連合会」と(経営者の立場から労働問題について提言する目的で結成された)「日本経営者団体連盟」が統合して発足した。有力企業が多く加盟している。また、自民党や民主党に政治献金を行い、政界や財界に大きな影響力を持った組織と言われている。
会長の選出については「日本の中心産業の中の中心企業」のリーダーから選ばれる傾向にある。また、「会長としての適性」や「会長活動に必要な資金を企業が捻出できるか」といったことも考慮される。会長の影響力は非常に大きいことから、俗に「財界の総理」とも呼ばれる。経団連の会長はかなり多忙であるため、就任と同時に出身企業の会長に就任し、経営は後任に任せるケースが多い。
*2
旧財閥系とは?
戦後、GHQが財閥解体命令をだしたことで解体された企業に、「三井」「三菱」「住友」「安田」などがあります。それらの解体されてしまった財閥系企業の流れを組んでいる企業、DNAを受け継ぐ企業が、今でいう「旧財閥系の企業」です。例えば「住友」という社名が付いている企業には、米倉氏出身の「住友化学」や、住友商事、三井住友銀行、住友電気工業・・・等があり、これらはすべて「旧財閥系」の企業である。
*3
経団連銘柄とは?
経団連に加盟している有力企業のこと。株式市場において経団連銘柄は「主力株」や「優良株」とも言われていた。
*4
経済3団体とは?
日本経済団体連合会(経団連)、日本商工会議所(日商)と経済同友会を指す。日商は中小企業の利益を代表。同友会は経営者が個人の資格で参加し、自由な提言をするのが特色。