「金型を守り抜け」 「運べる設備はすべて持ち出せ」 タイでの洪水発生時、自動車部品メーカーではこのような言葉が交わされたという。タイへの集積を進めてきた自動車産業が受けた打撃は特に大きい。
運転席と助士席上部に取り付けるサンバイザーはタイで集中生産してきた。一部品でも供給が途絶えてしまえば、完成車を作り上げることが困難になり自動車産業全体に波紋を広げることになる。部品の供給を途絶えさせないために、自動車部品メーカー河西工業はインドネシアやマレーシアに加え、日本でも11月から代替生産を始める。また、国内で生産する上で日本人従業員にはノウハウがないため、タイ人従業員を条件付きで受け入れるという。
→自然災害等によって生産がストップに追い込まれた時、どのようなアクションを起こすべきか?
⇒自社の規模や社会的責任の大小によって、取るべき行動は変わる。
生産がストップに追い込まれるという向かい風の状況でできるアクションは大きく分けると次の二つがある。
①生産ストップを受け入れ、ストップする前提で起こす行動。
②生産ストップを多少無理してでも回避し、ダメージを最小限に抑えようとする行動。
①の方は、生産量及び売上がおちることは仕方ないと判断して、(あるいは無理すると自己破滅するかもしれないというリスクを避けて)、それに合わせて自社側もダウンサイジングする。リスクと手間暇を最小限に抑えようとする。そしてダメージを受けた事業にこだわらず次の一手(新事業や他にできることを探す)を探る。
①のアクションが向いているのは、ビジネスの規模が比較的小さく、社会的な責任も比較的小さい、中小・零細企業だと思う。
②の方はダメージを受けても、あの手この手を使っていち早く立ち上がろうとする。現実を塗り替え元の状態に戻そうとするわけだから労力は非常にかかる。だが、その分こういったビジネスは作り上げるのが大変な分参入障壁が高く、一度モデルができてしまえば大きな利益やそれなりの安定も見込める。
②のアクションが向いているのは、ビジネスの規模が比較的大きく、社会的な責任も比較的大きい、大企業やインフラ系企業だと思う。
これらはもちろん業種等によって異なると思うが、自社にとって有利な方がどちらか、合理的に考えればどちらの方針でいくべきかはおのずと見えてきそうだ。