今、日本のある商品が韓国のポテトチップス市場を急激に活性化させています。
その商品とはカルビーが昨年2014年夏に発売した「ハニーバターチップ」。
ベースとなる塩味に、はちみつとバターを加えた独特の甘さが特徴で、日本では「しあわせバター味」として売り出されているらしく、聞いたことがある人もいるかと思います。
この「ハニーバターチップ」が韓国にて大人気とのことですが、試しに「ハニーバターチップ」でググってみると「韓国で爆発的人気!」等のフレーズが並んでおり、「ハニバタ騒動」と呼ばれる様々な騒動さえ起きているようです。
ハニーバターチップの販売は「ヘテ・カルビー社」(韓国大手製菓メーカー「ヘテ製菓」とカルビーの合弁企業 )行っていますが、日本と韓国の合弁ということで、極右派が日本批判の材料に使ったこともある等、他にもいろいろな都市伝説があるそうです。様々な人が反応し、話題が話題を呼び極端に加熱していく様は、日本にはあまりなく韓国の特徴かもしれませんね。
ハニーバターチップの生産が追い付かず工場新設
売れ始めたのは昨年秋頃。SNSでの芸能人の「ハニーバターチップゲットしました」等の書き込みから口コミによって急激に売れ出したそうです。そして工場を3交代制フル稼働で生産しているものの生産が追い付かず、ネットや店舗でも品薄状態が続き、ネットでは3倍の値段で売られていたり、ダンボールでの配送途中で何者かに盗まれるなど、いわゆる「ハニバタ騒動」が発生しています。
そのような中でカルビーは韓国に新工場を40億円で新設することを決め、2016年には稼働開始予定とのことです。
韓国での工場新設の背景
韓国で生産体制を大幅に整備することついては、単にハニーバターチップが売れている以外にも理由があります。
それはFTA(自由貿易協定)という法律的要因です。
通常、韓国が原料のじゃがいもを輸入する時は30%の関税がかかりますが、米韓FTAの取り決めにより12月~翌年4月までの間は非課税で輸入することができます。
3割近くも低コストで原料調達ができるのですから、日本での生産と比べると非常に大きなメリットです。
さらに、日本国内は少子高齢化で市場拡大の期待は薄く、成長戦略としては海外事業を強化する必要があるという点もあります。カルビーにとって韓国は、アメリカに次ぐ成長市場とのことです。
とはいえカルビーの連結売上高2200億円のうち、海外売上は約1割の220億円。まさにこれからというところですが、「ハニバタ騒動」等によって海外開拓は順調に進められているという印象です。
ハニーバターチップに学ぶ、一点突破を狙う姿勢
ハニーバターチップというたった1商品の大ヒットのおかげで、カルビーの韓国進出・市場開拓は順調に進んでいるように感じますが、ここから「一点突破」という戦略について改めて考えさせられます。
工場新設の結果は、もちろん数年経ってみないと分かりませんが、40億円での工場新設は大きな投資です。しかしここぞというタイミングで思い切りアクセルを踏み込んで、一点集中することは、大きく成長する上で決定的に重要ということは多くの人が感じていることだと思います。
仕事や私生活においても、チャンスフラグが立っているにも関わらず、大きな決断ができずにぐずぐずしていては、みすみすチャンスを逃すことになります。いつも周りの状況や成長チャンス、タイミング、自分自身の強み等に対してアンテナを張り、自分自身を“常に敏感な状態”“常に臨戦態勢”においておき、ベストな判断をスパッとできるように保っておきたいものです。
日経新聞2015/4/8企業1面「カルビー、韓国で生産倍増」より