飲食業にも広がる体験型消費

日経新聞2012年12月?日


今日のTOPIC

『飲食業にも広がる体験型消費』

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飲食店運営のタイムゾーンマネジメントが10月に開業した「渋③」はお客一人一人が多様なスープや具材、たれを自由に選んで自分専用のなべ料理を楽しめる店。組み合わせは無限。若い女性に人気だ。

まずは9種類のスープ(鶏つくね水炊き風鍋や海鮮トマトスープ鍋など)を選ぶ。
次に20種類から好きな具材(野菜やしゃぶしゃぶ肉など)を注文する。
カウンターで自ら20種類の素材から調合する調味料もあり、独特の味わいを作り出すこともできるという。
鍋は一人前サイズだが、皆で分け合えば楽しめる。
同社は「その日の気分や体調に合う微妙な味加減は店には分からない」と考え、お客に味付け任せるようにしたという。

So What?

ここ数年、消費は「モノ購入型から体験型」へと変わってきているといわれているが、飲食業界でも同じことが言えるかもしれない。
この記事のように、鍋の具材を自分で自由に選んで作るというスタイルは新しい。自由に作れるのは自宅であり、外食で食べる際は完成された料理を注文して食べるのが常識だった。

だが、モノ消費から体験消費へと移ろっていく流れは、ヒット商品によって生まれたブームのようなものではなく、「物は満たされたので今度は心を満足させたい、ワクワクしたい」といった多くの人間心理の変化が背景にある。
そのため、この体験消費の流れは業界問わないはずだ。
見栄や一時的な満足感を満たすようなビジネスには陰りが見えてきて、変わりに心が満足できるようなサービスにますます注目が集まっていくだろう。

この記事の「渋③」という店は鍋を自分たちで作ってもらうというものだが、言葉を換えれば、鍋料理を提供するのではなく、「仲間と鍋でも囲んでワイワイ楽しむ為の環境」を提供していると言える。お客さん自らがより自由に鍋を楽しみたいという思いを実現するための準備・環境・演出がこの店には整えられているということだ。
この店が提供しているのは料理というよりプラットフォームだ。
体験型消費に注目が集まっている現在、顧客の「自由に○○できる心地よさ」を実現させる為のプラットフォームを提供することが、重要かもしれない。

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