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市場主義の考え方でユニークな施策を立てるなどして街の課題であった人口増を実現させている町長がいる。
北海道東川町長の松岡市郎氏だ。
松岡氏が町長を務める「東川町」は、人口約7900人、予算規模60億程度の小さな町だ。1985年には「写真の町」を宣言し、毎年開かれている「全国高校写真選手権(写真甲子園)」が有名だ。
2008年から始めた、町内外の人に株主になってもらい、寄付という形で町へ投資してもらう「ひがしかわ株主制度」が象徴的で、「ふるさと納税制度」を納税でなく応援する意味の「投資」と呼ぶことで税金のイメージを払しょくしようとしたものだ。
東川町に投資した人は、特製の「株主認定証」が贈られ、株主優待として町内施設を優待価格で利用できるなどメリットがある。2012年12月現在、株主1500人、累計額で5000万円を突破した。
松岡氏の任務の一つは、町内外から投資を呼び込むトップセールスだ。国内外を駆け回って「東川町」の名前を
売っている。
そんな松岡氏は地元コメ農家の4代目として生まれ、製鉄所アルバイトを経て友人に誘われ東川町に就職。松岡の方針は昔から明快で「前例のあることはやらない」「他の町と比較しない」という感じだ。常に好奇心旺盛で常に外に目が向いている
町長になってからも、町職員を毎年欧米に留学させるなどし、職員を市場の空気にさらし、得られたアイデアを町に合う形で積極的に取り込もうとする。「ひがしかわ株主制度」もその一つだ。
松岡は写真関連の事業を通じて地道に「東川ファン」を増やしてきたが、そのファンの一人に、経済界きっての文化人資生堂名誉会長の福原義春がいる。福原は東川町を「フランス・アルルを並び称されるほど美しい街」という。そのような貴重な「文化資本」を築いてきた東川町にとっての最大の課題は「人口を減少させない」ことだが、松岡氏は過去に7500人程度がピークだった町人口を8000人近くまで増やした。これは、聞こえの良い短期視点の取り組みではなく、持続可能な取り組みによって実現されたものだ。
そのためには人材が必要とのことで、最近松岡氏はメンバーを連れて台湾やシンガポールへ訪れている。